1.学校法人 |
学校法人は、「学校教育法」「私立学校法」の定めにより、私立学校の設置を目的に設立された法人です。学校法人は、独自の「建学の精神」や「教育研究の理念・目標」に基づいて学校を運営し、その目的である教育・研究を遂行することにあり、企業のように営利を目的とすることはできない、極めて公共性の高い経営体です。 |
2.学校法人会計について(企業会計との違い) |
企業会計では、収益と費用を正しくとらえて、営業年度の正しい損益を計算し、企業の財政状態(資産、負債及び資本の状態)を知ることによって、より収益力を高め、財政的安全性を図ることを目的としています。 一方、学校法人会計の目的は、収支の均衡の状況と財政の状態を正しくとらえ、法人の永続的発展に役立てようとすることにあり、その目的を達成するため、計算書類(資金収支計算書、消費収支計算書、貸借対照表)等を作成します。 |
3.計算書類 |
文部科学大臣の定める「学校法人会計基準」という会計処理の法則にしたがって三種類の計算書類を作成し、所轄庁に届け出ることが義務付けられています。計算書類は次のとおりです。 |
1) 資金収支計算書 |
当該年度の諸活動に対応するすべての収入及び支出の内容並びに当該会計年度における支払資金(現金及び預貯金)の収入及び支出のてん末を明らかにします。 |
2) 消費収支計算書 |
当該会計年度の消費収入及び消費支出の内容及び均衡の状態を明らかにします。 |
3) 貸借対照表 |
決算日(本学園は3月31日)における資産及び負債、基本金、消費収支差額の内容及び残高を明示し、学校法人の財政状況を明らかにします。
※予算においては、作成を義務づけられていません |
4.計算書類の主な科目の説明 |
1) 資金収支・消費収支計算書に共通の科目 |
(1)学生生徒納付金 |
授業料・教育充実費・入学金など、学生・生徒から納付されたもので、収入のうち、最も大きな割合を占めます。 |
(2)手数料 |
入学検定料や証明書発行に係る手数料収入などです。 |
(3)補助金 |
国や地方公共団体などから交付される金銭です。 |
(4)資産運用収入 |
預貯金の受取利息などの収入です。 |
(5)事業収入 |
外部から研究委託を受ける受託研究収入、生涯学習講座受講料や心理教育相談料などです。 |
(6)人件費 |
専任教職員、非常勤講師、非専任職員などに支給する「本俸・期末手当・各種手当」、役員報酬、労働契約に期間の定めのない専任教職員の退職金財団掛金などです。 |
(7)教育研究経費 |
教育・研究活動や学生・生徒の学習支援・課外活動支援に支出する経費です。 |
(8)管理経費 |
総務・人事・経理業務や学生・生徒募集活動など、教育・研究活動以外の活動に支出する経費です。 |
(9)予備費 |
予算編成時において予期しない支出に対処するために設けています。 |
2) 資金収支計算書のみの科目 |
(1)前受金収入 |
翌年度分の授業料、教育充実費などで当年度に納入された収入です。 |
(2)資金収支調整勘定 |
資金の実際の収支を、当年度の諸活動に対応する収支に修正する取引に用いる勘定のことをいい、「資金収入調整勘定」と「資金支出調整勘定」があります。 |
(3)施設関係支出 |
建物、構築物、造作物などの支出をいいます。 |
(4)設備関係支出 |
教育研究用機器備品、その他の機器備品、図書、車両などの支出をいいます。備品は、機器設備、工具・器具などで耐用年数が1年以上、その価額が一定額以上(本学園では100千円以上)のものをいいます。 |
3) 消費収支計算書のみの科目 |
(1)帰属収入 |
学生生徒等納付金・手数料・補助金など学校法人に帰属する収入です。 |
(2)基本金組入額 |
学校法人が、教育研究の維持・充実に必要な資産を継続的に保持するための金額を、帰属収入から組み入れます。 |
第1号基本金 |
設立や規模の拡大もしくは教育の充実向上のために取得した固定資産の額 |
第2号基本金 |
将来取得する固定資産にあてる金銭その他の資産の額 |
第3号基本金 |
基金として継続的に保持し、運用する金銭その他の資産の額 |
第4号基本金 |
文部科学大臣の定める基準に基づき、恒常的に保持すべき資金 |
(3)消費支出 |
人件費・教育研究経費・管理経費などの支出で、@退職給与引当金繰入額、A減価償却額、B資産処分差額を含みます。 |
@退職給与引当金繰入額 |
労働契約に期間の定めのない専任教職員が退職した場合、学校法人は退職給与規程に基づき退職金支払義務があります。退職金の額は勤続年数に応じて毎年増額していきます。従ってその支払いの原因は教職員の勤務する各年度に生じていると考えて、退職金支払いに先立って、あらかじめ各年度に負担額を消費支出として計上し、負債と記載します。 |
A減価償却額 |
固定資産の内、建物・構築物・機器備品などは、時間の経過や陳腐化などによってその価値が減少します。その減少した価値を減価償却額として消費支出に費用配分します(定額法)。 |
B資産処分差額 |
不動産・有価証券などを売却し、その代価が帳簿残高を下回った場合、その差額を計上します。また、建物・構築物などの取り壊しや、使用不能になった機器備品を除却処分した場合、処分時点の帳簿残高を計上します。 |
4) 貸借対照表の主要科目 |
(1)有価証券 |
国債・地方債・社債などがありますが、会計年度末後1年をこえて保有するものは「その他の固定資産」に計上し、一時的な保有を目的とするものは、「流動資産」に計上します。 |
(2)現金預金 |
小口現金及び銀行の各種預金です。 |
(3)預り金 |
給与・報酬などにかかる源泉所得税、住民税など、他に支払うための一時的な金銭の受入額です。 |
(4)消費収支差額 |
各年度の消費収入から消費支出を差し引いた差額の累計額です。消費収支計算書において、消費収入が消費支出より多い場合、その差額を「当年度消費収入超過額」と表示し、逆の場合は「当年度消費支出超過額」と表示します。 |