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親和中学校・親和女子高等学校神戸親和大学附属親和幼稚園
理事長メッセージ

ごあいさつ
〜新しい年度を迎えて〜

理事長     親和学園は、お蔭様で今年も4月に新たに園児・生徒・学生を迎えて、新年度を迎えることができました。といっても、もう5月中旬です。3月と4月、海外出張が続き、新年度のご挨拶が遅れたことをお詫びいたします。改めて、2026年度を迎え、皆様に学園の現状について説明を申し上げ、ご挨拶に代えさせていただきたいと思います。
    ご存知のように、現代はAI革命の時代に突入して、社会は急速に変化しています。サム・アルトマン(OpenAI社のCEO)の言うように「生成AIの進化はなにものも止めることができない暴走列車」で、創造と破壊が並行して進行しており、そのスピードも私たちの想像をはるかに超えるものです。いわゆる「加速主義」が政治・経済・文化等の分野で主流となって、私たちをこれまで知ることのなかった全く新しい世界に導いています。その新しい世界において私たちはこれまでの「思考と行動の様式」を根底から変えざるを得ない状況になってきています。
    私たち教育機関にとっても例外ではありません。私たちの教育が拠って立つ教育の理念、ビジョン、パーパス(存在意義)すら、再考を迫られていますし、そこから当然、毎年の入学試験や日々の授業についても、その在り方について変革を迫られていると考えています。教育の対象である子どもや若者がいわゆる「デジタルネイティブ」と言われ、その思考と行動の様式が、私たちの間に大きなギャップ(世代間ギャップ)を生じさせていることも、これからの教育の在りようを考える時、対応を難しくしています。まずは、このAI時代においては、中高でも大学でも、漠然と知識や教養の教育や正解主義の教育を中心に展開することは許されないと思っています。今や、富山氏風に言えば「AIネイティブな教育」が要請されているのでしょうか。この点については、改めてお話しさせていただきたいと思っています。
    教育機関は、もう一つ、差し迫った状況に直面しています。加速度的に進行する少子化です。ご存知のように、多くの私立大学が厳しい状況に直面しています。昨年の2月の中教審のいわゆる「知の総和」(答申)では、近い将来、1年で中規模の大学が90校程度減少していくようなまことに大学にとって厳しい状況になるとの指摘がありました。最近の新聞でも、1面で財務省の「私大250校削減案」というショッキングな見出しもありました。
    私は、早くからこのような状況を想定し、学園経営の施策として、いわゆる「両利きの戦略」(1)を進めて参りました。つまり、一方で、既存の教育、とくに学園の伝統である特色・強みをさらに「深化する」とともに、他方において、変化する時代に対応した新規の教育事業を「探索する」という「両利きの戦略」です。そしてこの戦略の土台となる哲学は、「深化」の過程においても「探索」の過程においても、教育の基本理念を堅持するということです。そして親和教育の基本理念とは「共に学び共に成長する」というものです。人類学者であるティム・インゴルド風に言えば、「共に違いを生きる」ことです。目指しているのは「共に違いから学び合う」という「包摂性の高い教育」です。
    さて、前置きはここまでとして今年の新入生の状況をご報告いたします。2つの親和保育園(社会福祉法人)と大学附属幼稚園は地域の信頼を得てほぼ募集定員の園児を迎えることができました。ここでも「子どもたちと共に」そして「保護者と共に」が親和の保育・教育のモットーです。
    親和中学校は2025年4月に「女子部と共学部の併置」という構造改革を行い、更なる教育の深化に努めたこともあり、今年の入学生は192名と募集人員を確保できました。男子生徒も順調に増加して、学校は活気に満ちています。施設も外壁、トイレ、理科室、グランドの人工芝生化等々、教育環境を整備して、生徒の学びと成長を支援しています。もちろん、高校のSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の指定以来、その教育内容の深化を図っており、今年の大学進学も堅調で、大阪大学に6名が進学しました。次年度は、生徒たちも東京大学・京都大学等の難関大学を目指して日々の勉学に意欲的に取り組んでいます。ただ、私たちは生徒の健康で安心な教育にも配慮を怠っていません。男子に人気のサッカー部やバスケットボール部の活動も始まっています。高校募集は、まだ十分な成果を上げていませんが、大学との連携・接続を視野に入れたスポーツ・カルチャーコースや難関大学への進学をめざす「アドバンストコース」の充実を図って参ります。また、最近は、海外の大学に、直接進学する生徒も徐々に増えてきています。韓国の梨花女子大学、延世大学や北京大学などです。建学の理念である国際人の育成のためにも海外留学・研修に注力して参ります。
    いずれにしても、139年の歴史を誇る親和中学校・高等学校ですが、不断に伝統の深化を図るとともに、日々生徒と誠実に向かい合い、“always in human touch”を心がけ、生徒の成長を支援して参ります。
    大学について説明いたします。2023年度に共学化して以来、4年間続けて、380名の入学定員を大幅に上回り、今年、在学生全員の収容定員比でもほぼ120%となりました。とくに、スポーツ教育学科と教育学科の入学者の増加が目立っています。先生を目指す学生の増加は、先生希望者の減少が問題となっているだけに、ありがたいことです。とくに小学校教員や中高の数学や保健体育の教員を目指す学生が増加しているのが特徴です。また、男子学生の増加も顕著で、今年の新入生では男女比はほぼ5対5の割合(入学者495名のうち、男子246名、女子249名と女子が3名多い)になりました。来年は男子学生が初めて卒業を迎えるにあたり、キャリアセンターを中心に学生一人ひとりに対する就職ガイダンスに熱心に取り組んでいます。
    次に、大学教育について特記すべき2つのことを説明させていただきます。昨年の秋学期からスタートした「地域共創科目(16単位)」と海外留学・研修(世界各地)についてです。いずれも親和独自の手作りの実践的な教育プログラムです。
    まず、地域共創科目は、毎週水曜日に地域社会の課題を地域の人たちと協力して発見・解決に取組むという活動で、1年生の昨年秋学期からスタートしたプログラムです。今年は1年生全員が秋学期、2年生全員が春学期に社会活動に取り組みます。こうして2027年度は、1年生(秋学期)、2年生(春・秋学期)、2028年度は1年生から3年生(春学期)全員(約1200人)が社会的な課題に取組むことになる壮大な体験プログラムです。恐らく、日本の大学では初めての企画であり社会的な活動だと思います。今後、取り組む過程で色々な課題・問題が生じると思いますが、それを地域の人たち・教職員と協力して一つひとつ解決していくことも、この活動の意義だと考えています。
    この「地域共創科目」の意義・狙いについて、私なりの解釈を言えば、現代はAI革命の時代と言われ、生徒・学生にとっても(もちろん、私たちにとっても)多くのことをAIに頼っています。生活でも仕事でも学習でもAI化したスマートフォンやパソコンに頼ることが多くなり、私たちの身体を直に使って他者と共に体験し、共感しあい、共に学ぶ機会が大幅に減少しています。山極先生や関野先生が言われるように、未知のことを知りたい、未知のことに挑戦したいという好奇心や探究心、そして挑戦する気持ちを培う機会が失われつつあります。種々の対象への好奇心・関心・探究・挑戦は教育の核を構成するもので、幼少期・青年期の教育において大切にしなければならないものだと思っています。学生にも地域社会に出て色々なことに関心をもって見て、考えて、判断し、そして他者と共に解決に向けて行動してほしいと願っています。それこそ、ポール・サロペックやシャリー・ティッシュマンのいう「スロー・ルッキング」の活動に通じるものだと思います。若い時期にこのような社会的な活動を通して「ゆっくり見て、考えて、判断する」ことを学んでほしいと切に思っています。そして粘り強く、しなやかな生き方、それも、いつでも他者をリスペクトし他者と協働できる生き方を身に付けてほしいと願っています。
    もう一つ、親和学園の創立以来の伝統であり、大学の教学の柱でもある国際人の育成についてお話しさせていただきます。2022年、まさにコロナ禍でしたが、17名の学生がアイルランドの国立コーク大学に1年間の留学をしました。以来、コーク大学には毎年、ほぼ10名の学生が留学しています。今年の4月からもコーク大学に10か月間の予定で12名の学生が留学しています。(1年を10か月にしたのは、円安で生活費・学費等が高騰しているからです。)さすが若い学生、中にはTOEIC900点を超えるスコアになって帰国する学生もいて頼もしい限りです。
    幸い、近く韓国の高麗大学とダブルディグリーの協定を結ぶ予定なのです。3年次から高麗大学に進学し2年間の修学を終えれば、親和(国際文化学科)と高麗(国際学部)の二つの大学の学位が取得できるという仕組みです。その進学の要件が原則TOEICの900点以上なのです。すべて英語の授業を受けるために英語力は必須なのです。まずは、コーク大学から帰国した学生が高麗大学へ進学してくれることを願っています。期待しています。
    ほかにも、今年の2月には、教育学科の学生が世界的に有名なレッジョエミリア(イタリア)で幼児教育の研修を実施しました。すでに20年を超える伝統ある研修です。昨年はカナダのデューイ実験学校としても名高いトロント大学附属校園で教育研修(こちらも20回を超える)をしましたが、カナダも円安で研修費が高騰し、イタリアでの研修と交互に実施(隔年実施)することにしています。世界の最先端の教育現場を体験することは、将来、先生を目指す学生にとってかけがえのない体験だと考えているのです。今年の9月には、韓国のソウル大学と梨花女子大学の2つの附属幼稚園での研修を予定しています。私自身、一昨年、昨年と2つの幼稚園を実際に訪問してみて、その保育・教育の質の高さに感銘したこともあり、実施を決めました。
    こうしたご縁もあって、6月27日に大学創立60周年記念事業の一環として第18回:国際教育フォーラムを開催いたしますが、ソウル大学と梨花女子大学の教授にパネラーとして参加していただくことになりました。いずれも大学の附属幼稚園をリードされている幼児教育が専門の著名な研究者です。(関心をお持ちの方は是非ご参加ください。)
    さらには、来年の2027年度実施を視野に入れて、ニュージーランドで今、注目されている「テファリキ」の保育・教育を学ぶ機会・研修を計画中です。世界の教育はどんどん進化しています。日本の教育にも世界に誇れる優れたところは多くありますが、これだけ変化の速い社会です。社会の変化に対応するためにも、海外の優れた教育からも学びながら、5年、10年先を考えて、未来を拓く教育を「探索していく必要」があることを痛感しています。
    世界は混迷を極めていますが、世界の未来を開くのは教育だということを忘れてはならないと思います。幼少期から青年期までの教育を疎かにする国がいずれ衰退することは歴史を見れば明らかです。(今のアメリカでは教員不足が深刻で教育が崩壊していると言われており、心配です。)
    私たちは、ティム・インゴルドの言うように、すべての人が「違いを共に生きる」包摂性の高い教育、開かれた教育をなにより重視する学校園・大学づくりを目指して参ります。今後も、みなさまのご理解とご協力、ご支援をお願い申し上げます。
    終わりになりましたが、皆様のご健勝とご活躍を祈念申し上げます。

2026年5月22日
学校法人親和学園
      理事長    山根 耕平

  ※参考文献
  (1) 富山和彦著、松尾豊監修『日本経済AI成長戦略』文芸春秋、2026年。
  (2) 樋口恭介著、『21世紀を動かす思想』集英社新書、2026年。
  (3) 今井翔太著、『生成AIで世界はこう変わる』SB新書、2024年。
  (4) オライリー&タッシュマン、入山章栄&富山和彦解説、渡部典子訳『両利きの経営』東洋経済新報社、2019年。
  (5) シャリー・ティッシュマン著、北垣憲仁&新藤浩伸訳『スロー・ルッキング』東京大学出版会、2025年。
  (6) 山極寿一&関野吉晴著、『人類は何を失いつつあるのか』朝日文庫、2022年。
  (7) 山極寿一著、『ゴリラの森で考える』毎日新聞出版、2025年。
  (8) ティム・インゴルド著、古川不可知訳『教育とは何か』亜紀書房、2025年。
  (9) ティム・インゴルド著、奥野克己&宮崎幸子訳『人類学とは何か』亜紀書房、2020年
  (10) 佐久間亜紀著、『教員不足』岩波新書、2024年。



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